第3章 相手を知るということ
男「りんちゃん、そろそろうちの会社に来る気になった?」
「おはようございます。資料はこちらです。」
りんはにっこりと微笑むと小首を傾げながら資料を差し出した。
すると『いつでも言ってねー。』とあっさり引き下がる。
(今時そんな絡み方流行らないのに…。)
そう思って内心溜息をついていると、準備で忙しいはずの藤川が寄ってきて耳元に口を近付ける。
藤「大丈夫だった?ごめんね、彼が来る時は私も側にいるべきだった。」
そんな言葉にりんは再びにっこりと慣れた笑顔を浮かべる。
「何も困っておりません。」
そう言って頼らないりんを見て、藤川は何か言いたげに眉を寄せたのだった。
———
会議が終わって出張準備に取り掛かり始めた時、ずっとりんをちらちらと見ていた藤川はとうとう口を開いた。
藤「 "俺" と君が別れたという噂が流れていることは知ってるか。」
「……………はい。存じ上げております。」
藤川は今まで二人の間に流れる噂について一切触れてこなかった。
それ故にりんは今になってそんな事を問われて固まった。