第2章 初めての彼氏は…、
「…あ……、」
りんは背から手が離れたのを確認すると、俯きながら一歩後ろに下がった。
「ありがとうございました…。」
杏「恋人なら当然だろう。」
その言葉に固まったあと小さく頷く。
(当然、なんだ…。これから一緒に乗る時は心の準備をしておかなくちゃ…。)
そう決意してから間もなく、二人の最寄り駅に着いた。
「ここの駅が被るなんて奇跡に近いですよね。マイナーというか何というか…。」
手を繋がれたりんが電車を降りながらそう言うと、杏寿郎は笑みを浮かべながら振り返った。
杏「俺の勤める学校がこの辺りなんだ!宇髄から学校の名は聞いていないのだな!」
「天元くんが先生やってるって知ったの今日ですよ。自己紹介聞いて驚きました。多分、私が『らしくない。』って笑うと思ったんじゃないかなと…。」
それを聞いた杏寿郎が楽しそうに笑う。
(………………。)
その嫌味のない爽やかな笑い声を聞いたりんは、緊張を忘れて微笑みを浮かべた。