第2章 初めての彼氏は…、
杏「君こそ不便なのではないのか!」
「正直なところ不便です。でもこのローカルな雰囲気を気に入ってしまって…。」
りんがそう言うこの駅には駅員がいない。
つまり、珍しいことに無人駅なのだ。
杏「ああ、確かにそういった趣はあるな!…どっちだろうか!」
杏寿郎が出口を出てそう問うと、りんは『あちらです。』とスッと右を指差した。
杏「よもや。駅を出てからの方向も同じだな!」
「わ…本当ですか?生活リズムが今と少し違っていれば顔見知りになっていたかもしれませんね。」
杏「そうしたら今日驚いたろうな!」
そんな事を話しながら杏寿郎がにっこり笑うと、りんも柔らかく微笑む。
杏寿郎は隠し事が多いりんの本当の笑みを見る度に、心がぎゅっと苦しくなった。
杏(…この感覚は、)
「杏寿郎さんのお家はどの辺りなのですか?」
りんの問いかけにハッと我に返った杏寿郎は、立ち止まったりんの目の前の建物を見て首を傾げた。