第2章 初めての彼氏は…、
杏「…宇髄は君とどのくらい仲が良いんだ。紹介は今日までしてくれなかったし、君の懐きようを見るに可愛がっていたのだろう。」
「な、懐いてなんかいませんよ!」
りんは言った後にハッとしてホームにいる人達に謝るように小さくお辞儀をした。
杏「すまない、言い方が悪かったな。君に慕われていて羨ましく思ったんだ。」
そうすんなりと謝られるとりんも肩の力を抜いた。
「慕ってなんかいないですが…、小学生までは本当に仲がよかったです。中学からはさっき言った通り噂になってしまって、私が天元くんを避けるようになりました。連絡を取るようになったのは私が大学に入ってからで、ご飯や飲みに行ったのは数えるほどです。」
思ったよりも距離があった事を知った杏寿郎は小さく息をついた。
杏「…そうか!」
杏寿郎が明るい笑顔を浮かべると共に電車が到着する。
杏「む、来たな!」
りんは自身の手を強く握り直した杏寿郎の手を見つめながら『はい。』と返事をした。
(大っきい手……。)
それを確かめるように親指でするりと撫でると杏寿郎の身が固まった。
「……あ…………、」
りんは口角を上げた杏寿郎の大きな目に見つめられると頬を真っ赤に染めた。
「で、出来心で…、勝手にすみません…。」
杏「いや…、構わない。俺も勝手に握ったので気にしないでくれ。」
りんは杏寿郎から足元へ視線を移すとその言葉にこくりと頷いた。