第2章 初めての彼氏は…、
「す、好きというのは…色のことで…!」
りんの声は小さかったが、静かな車内にはよく響いた。
それによってりんの頬はますます染まる。
杏寿郎はほんの少しその頬に触れたいと思ったが、店では触れられたそれは、今は簡単に触れて良いものではない気がした。
杏「そうか。それは残念だな。」
「……え…………?」
りんが呆けた顔をしたのと同時に電車は減速し始め、あっという間に乗り換え駅に着いてしまった。
杏「足元に気を付けてくれ。」
杏寿郎はそう言うと手を繋いだまま電車を降り、そしてそのまま離さなかった。
(今握る必要はないんじゃ…。)
そうは思いつつ、軽薄そうな男に触れられた時とは異なる温かい気持ちが芽生えている事に気が付いていた。
(全然違う。他の人と…全然違う。優しい。心が綺麗。それから…、)
りんは手を引く杏寿郎を斜め後ろから見上げて頬を染める。