第2章 初めての彼氏は…、
「私もです!えー!一目見たら絶対覚えてるだろうから、すれ違った事一度もなかったんだろうなあ。」
杏寿郎はりんの明るい無邪気な笑顔を愛でるように目を細めた。
杏「…ああ!驚いたな!!」
杏寿郎がそう明るく返すと、上った先のホームに電車が到着する。
日曜の少し遅めの時間、帰宅ラッシュで電車は混んでいる。
杏「おいで。」
杏寿郎は乗り込む前にりんの手をさらりと握り、電車に乗り込むとりんを人混みから守るように立った。
「……ありがとうございます。」
りんの頬が再び染まっているのを見た杏寿郎は、嬉しいはずなのに、胸がぎゅっと苦しくなるような感覚を覚えた。
少し汗ばみそうになった手でりんの小さい手を握り直す。
さらりと握れた手だったが、最初に握った手と今握っている手は違う手のようにさえ思えた。