第2章 初めての彼氏は…、
「………それは…、その、今の上司で…、」
杏「君が秘書として仕えている部長か。歳はいくつだ。名前は何と言う。性格や背格好も教えてくれ。」
口角を上げたままの杏寿郎の声は低い。
先程までは笑っているのかいないのか区別がつかなかった。
しかし、今は断言できる。
(………笑って、ない。)
「お歳は三十六で、藤川誠司さんというお名前です。性格は…、優しいです。身長は杏寿郎さんと同じくらいで細身のお方です。」
りんが何故か後ろめたい気持ちを抱きながら小さい声でそう伝えると、杏寿郎はりんの頭を撫でた。
杏「教えてくれてありがとう。」
結局杏寿郎はその話題についてはそれしか返さず、あとは何て事のない普通の質問をして和やかに会話を続けた。
そして、そうこうしている間に駅に着いてしまった。
りんは人の流れに乗って改札を通ると、邪魔にならないように一旦脇に寄って立ち止まった。