第10章 使命感
りんは拳を握りながら杏寿郎の背から出た。
杏「りんさん、後ろに」
「いえ。私が何とかしないと…。」
りんはそう言うと心配そうな顔をしている藤川を見つめて拳を握り直した。
「藤川部長。私は無理をしておりません。不要な心配です。もうお引き取り下さい。」
言葉に力を込め、精一杯強めに伝えた。
それなのに届いている手応えは全くしなかった。
『そう言わされているのだろう。』
そう聞こえた気がしたのだ。
「わ、私は本当に杏寿郎さんの事が好きなんです。自分の意志でお付き合いしています。」
自身の言葉が "嘘" となって藤川に届いてしまっている妙な感覚にりんは冷や汗を流した。