第1章 出会い
天「なあ、オイ。」
杏「どうした!」
一方その頃、食べる手を止めない杏寿郎に天元は眉を寄せていた。
天「最後の晩餐じゃねぇんだぞ。」
杏「はは!君はおかしな事を言うな!なぜそのような発想に至ったのか聞いても良いだろうか!」
天「お前がこんな席でも色気より食い気を出すからだよ!!」
そう言うと杏寿郎が綺麗に持っていた箸をパシッと取り上げる。
すると杏寿郎は太腿に軽く握った両手を置いて微笑んだ。
杏「そうカリカリとするな。俺に協力できる事があるのなら手伝う。頼ってくれ。」
天「俺はお前の為に女集めたの!お前が頑張れよ!!」
杏「よもや!!」
天元は『初めて聞いたぞ!』とでも言いたげな顔に溜息をついた。
天「りんって従姉妹がいるっつったろ。あいつと話してみろよ。」
杏「君の気持ちはありがたいが、俺は今のところ女性に困っていない。」
天「そういうセリフは女がいる奴が言うんだよ。しかもお前の場合は…、」
そう言いかけたところで女性陣が帰ってくる。
天「とにかく喋れ!りんだぞ!水瀬りん!」
杏「むぅ。」
杏寿郎は天元がこっそり指し示した先の女性に目をやった。
杏(……そうは言われても先客がいてはどうしようもない気がするが…。邪魔するのも良くないだろう。)
そうして杏寿郎は箸を持ち直してしまったのだった。