第10章 使命感
藤「その、水瀬さん…最近ずっと寝不足みたいだったから…。私はただ…君の体の心配をしているだけなんだ。本当に、ただただ心配なんだ。」
その真っ直ぐな瞳を見てもりんは握った拳の力を緩めなかった。
(寝不足、バレてたんだ…。)
「……そうでしたか…。お気遣いありがとうございます…。」
りんがそう頭を下げると藤川はほっとしながら改めてりんの顔を見つめた。
そして、それと同時に杏寿郎の牽制する鋭い瞳を思い出した。
藤(…会社にまで牽制に来るなんて独占欲の塊以外の何物でもない。…いや、上手くいっていなくて離すまいと焦っているのかもしれない。それでも別れていないのは水瀬さんが情にほだされてしまっているからなんだろう。)
藤川は希望が混じって誤った使命感を抱いてしまっている事に気が付けなかった。