第10章 使命感
(後ろ首の噂については何も言ってこないな…。そもそも噂が立っていなかったのか、それとも営業部には噂が届いてなかったのか…、)
「じゃあ…私あっちに行くね。」
りんはそう言いながら普段藤川が使っている部屋を指差した。
藤川の反応が気掛かりであった為にその笑顔は少し強張っている。
後輩はその笑顔を見て心配そうに眉尻を下げながら頷いた。
———パタン
りんは部屋に入ると秘書用のデスクに纏めた資料を置き、口をきゅっと結んだ。
(悪いことはしてないもの…堂々としてよう…!)
———
しばらくして、とうとう戸が開く音が響いた。
りんは少し緊張した面持ちになるとすぐに立ち上がった。
「おはようございます。」
部屋に入ってきた藤川は感情を読み取りづらい顔をしていた。