第10章 使命感
杏「それは…いつの話だろうか。」
杏寿郎は事を把握しきれていなかったが、りんの赤い耳を見てどこかほっとしたような気持ちになった。
それどころか、二人の間に生じていたすれ違いがどう解決していくのかを楽しみにすら感じていた。
「あの…、引かないで聞いてもらえるとありがたいのですが…、」
りんはそう言ってちらりと視線を上げる。
見つめた先の杏寿郎は優しい瞳をしていて、そしてどこか嬉しそうだった。
杏「当たり前だろう。おいで。ソファで話そう。」
———
杏「……よもや。」
赤いりんから一通り説明を受けた杏寿郎は口角を上げながら僅かに頬を染めた。
杏「すまない…毎晩辛い思いをさせた。」
「…………………いえ………。」
りんは顔を伏せて早くも白状した事を後悔し始めていた。