第10章 使命感
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(ソファで寝てたのどう思われたかな…。理由を聞かれたら何て返そう…。)
りんは何度もそう考えたが、どうしても本当の事を言う勇気は出なかった。
かと言って嘘を見抜いてしまう杏寿郎に嘘をつくわけにもいかない。
(『寝る時に杏寿郎さんが抱きしめなければ出て行かない』…とも言えないし…。とりあえず杏寿郎さんの出方を見てみよう…。)
丁度そう気持ちを決めた時、視線を感じた。
「ぁ……、」
振り返ったそこには少し眉を寄せた杏寿郎が立っていた。
「…お、おはようございます…。起こしてしまいましたか…?」
杏「………。」
杏寿郎はすぐに挨拶を返さず、りんの元まで歩み寄ると火を消してりんの額に手を当てた。
杏「体調は大丈夫か。」
その言葉を聞いた瞬間、杏寿郎の優しさに涙が滲んだ。
それを見た杏寿郎が目を丸くする。