第10章 使命感
真っ先に純粋な幸福感とは程遠い感情を覚えてしまうりんは言葉を詰まらせてしまった。
そんな様子を見た杏寿郎も口を薄く開いたまま固まってしまった。
杏(いつだって相手が同じ気持ちだと驕ってはならない。だが…、)
杏「…すまなかった。」
杏寿郎はりんが『抱かれる事で幸福感を覚えない』と思っている事実を受け止めると、しっかりとりんの手を握り直してそう謝った。
深刻そうに謝られたりんは目を見開いて顔を上げた。
「ち、違います!杏寿郎さんが謝るようなことは何もなくて…っ、ただ……、」
だが、どうしても『抱きしめられるだけで厭らしい感情が湧いて寝不足になっている』だなんて言えなかった。
「……違うんです………。」
りんはただそうとしか返せず、杏寿郎の大きな手を握り返しながら再び俯いてしまったのだった。