第2章 初めての彼氏は…、
杏「天兄…宇髄の事か!はは、仲が良いのだな!そう呼ぶ君も大変愛らしい!!」
「あ、ぅ…。」
りんは自身の発言と杏寿郎の発言からくる動揺で顔を赤らめた。
(私のタイプって杏寿郎さんなのかな…?タイプなんて考えたことが…、それに今また愛らしいって…、)
そうして口を結んで顔を赤くしていると、杏寿郎がまたさらりと腕を伸ばしてりんの頬に手の甲を当てた。
「…っ」
杏「随分と熱いな。飲みすぎ、ではないようだが。」
杏寿郎はそう言ってちらりとりんのグラスを一瞥すると、今度は身を屈めてりんの顔を覗き込む。
杏「体調でも崩していたのか。もう店を出よう。きちんと家まで送るので安心してくれ。」
「え、い…家まで……?」
りんは親族以外の男に住所を晒した事がなかった。
信用に値するような男が寄ってこなかったからだ。
杏「体調を崩しているし、少しとはいえ酒も入っている。一人で帰すはずがないだろう。」
杏寿郎にそう『当たり前の事をなぜ聞き返すのか』というように首を傾げられると、りんは少し黙ったあと小さな声で『お願いします。』と呟いたのだった。