第9章 牽制
(今日は何作ろうかな。杏寿郎さんに聞いてみ、)
杏「りんさん!!!」
会社から出たところで立ち止まって杏寿郎に連絡を取ろうとしていたりんは、大きな声にスマホを取り落としそうになった。
「え…!?杏寿郎さんっ!!」
りんはその場にいる皆が振り返るような明るい声を出した。
そしてタタッと正面階段を駆け下り杏寿郎の元へ急ぐ。
「どうして…いつから待っていたんですか!?」
見つめる杏寿郎は休みにも関わらずスーツを着ていた。
杏寿郎は慌てて駆けて来るりんを微笑ましそうに見つめ、目の前まで来ると優しく頭を撫でた。
杏「お疲れ様!一緒に帰ろう!!」
杏寿郎は質問には答えず、りんの手を握るとスタスタと歩き始める。
りんはちらりと周りを見ると顔を赤らめた。
というのも良くも悪くも有名人のりんは注目の的になっていたのだ。
それでもりんは杏寿郎が何をしてくれているのかを理解し手を恋人繋ぎに握り直した。
「職場が一緒だったらこうして毎日一緒に帰られるのに…。」
杏「はは!考えただけで幸せな気持ちになるな!!」
りんが満面の笑みを浮かべる杏寿郎に微笑み返すと、二人はどう見てもお似合いの幸せそうなカップルとして周りに認知されたのだった。