第9章 牽制
杏(妙な虫はそちらだろう。抓って跡を付けていたとは…。)
「そんな…キスマークみたいな跡になってたなんて…。」
一方、首の後ろがそんな事になっていたのを初めて知ったりんは顔を赤くしながら俯いていた。
(皆に見られてしまったのかな…。営業部の人はもう杏寿郎さんの事を知っているけど、他部署には未だに藤川部長と付き合ってると思ってる人もいる。新しく変な噂が立っちゃったらどうしよう…。)
りんがそう参ったようにため息をつくと、杏寿郎はハッとしてりんの頭を撫でた。
杏「互いに情報共有出来たのだから一歩前進だ!俺も対処法を考える!あまり心配するな!!」
その頼もしい言葉と明朗闊達な彼らしい声色に、りんはほっとしたような表情を浮かべて顔を上げた。
「いつもありがとうございます。」
杏寿郎はそんなりんに微笑みかけながら頭を撫で続けた。
杏(幸い、来週は創立記念日がある。)
そして、そう思うとある決意をしたのであった。