第9章 牽制
藤(隠しているのか。それともまだ気付かれていないのか…。)
藤川はそうもやもやとしながらもう一度華を見たくなってしまった。
藤「…水瀬さん、ちょっと良いかな。」
そしてとうとう、昼休憩が終わった頃にりんをデスクまで呼びつけてしまった。
「はい。いかが致しましたか。」
藤川は寄って来たりんを見つめると、自身の髪の毛に触れた。
藤「水瀬さんは髪が長いからもう少し纏めた方が良いと思う。神経質な取引先の方もいらっしゃるからね。」
「畏まりました。指摘して下さってありがとうございます。」
りんはそう言って下がると髪を一度解き、手早く一つに結い上げた。
すると顕になったのは杏寿郎が付けた歯型であった。
藤「………………………………。」
藤川は最初、『相手を怒らせてしまった』と冷や汗をかいた。
しかし、すぐに首を傾げた。
りんが少しも抵抗を感じない様子で髪を纏めたからだ。