第9章 牽制
「…っ」
りんは体を跳ねさせたが何をされたのかまでは分かっていないようだった。
杏寿郎はくっきりと残った歯型を撫で、そこに優しく口付けを落とす。
杏(もう二度と他の男に印を付けさせないよう努めよう。)
そしてそう決意したのだった。
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「あ、杏寿郎さん。」
杏(…頬の腫れは引いたようだな。)
杏「おはよう。調子はどうだ。」
翌朝、杏寿郎は先に起きて朝ご飯とお弁当を作っていたりんにそう問い掛けた。
日が昇って襲われた時と空気が変わった為か、りんの表情は随分と明るくなっていた。
「おはようございます。杏寿郎さんが何度も『大丈夫だ。』って言ってくれたから今はもう平気です。それに、これからは杏寿郎さんが毎日一緒なんだって実感も湧きました。」
杏寿郎はりんの表情を見て言葉に偽りがない事を確認すると、キッチンに入ってりんを抱き寄せた。