第9章 牽制
(杏寿郎さんは絶対にそんな事を思わない。)
そう分かっているのに不安が消えない。
するととうとう、りんはただ優しく抱きしめる杏寿郎の胸元で拳を握りながら、泣きそうな顔で杏寿郎を見上げた。
「…ふ、触れてください……。」
その言葉に杏寿郎は目を丸くしながらりんの顔を覗き込む。
杏(今も一応触れている。と言う事は…、)
杏「抱いて欲しいという事か。」
そう問うとりんは縋るような顔で頷いた。
杏「…分かった。言わせてすまない。君が安心するまで優しく愛そう。」
杏寿郎はそう言うとほっとした表情を浮かべるりんの額に優しく口付けた。
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行為中、杏寿郎は頭が蕩けてよく働かなくなったりんをうつ伏せにした。
華を見る為だ。
杏(随分と濃く付いているな。)
杏寿郎はそう眉を顰めると口を薄く開き、対抗するようにりんの後ろ首に強く噛み付いた。