第9章 牽制
「杏寿郎さん…?」
杏「……この方が似合う。」
華を付けられている事を教えればりんがまた男の事を思い出してしまうだろうと思い、杏寿郎はただそう言った。
一方、りんはそんな思惑に気付かずにただ『そうですか。』と呟いた。
「あの…お風呂、一緒に入ってもいいですか…?」
杏「勿論だ。」
トイレの前にまで付いて来ていたので、杏寿郎はこうなる事を予測していた。
杏(今日は何もせず、ただ側にいてあげよう。)
そしてそう決意すると欲を持たずに風呂を共にし、ベッドに入ったのだった。
「…………………………。」
りんは杏寿郎が手を出してこない理由を分かっていた。
しかし、長年培ってきたネガティブな感情が膨らむと、『他の男に触れられたから汚く見えているのではないか』という考えが浮かんできてしまう。