第9章 牽制
杏「帰りは毎日駅まで迎えに行こう。夜道は決して一人で歩かないように。」
それを聞いたりんは少し肩の力を抜いた。
「分かりました。お願いします。」
そう返事をし、杏寿郎にくっつくように座り直す。
そして小さく『いただきます。』と言ってからプリンのフタを剥した。
杏寿郎はそんなりんを見下ろす。
杏(弱いところを見せてくれるりんさんに応えてあげたい。まずはフォローを…しっかりと……、)
そう思いながら目を大きく見開いた。
視線の先にあったのは、自身だけが付けられると思っていた赤い華であった。
杏(……あの男に付けられたのか。後ろ首となると髪を上げればすぐ周りの者に分かられてしまうな。)
上司が付けた物だとは露知らず、杏寿郎は眉を顰めてりんの髪飾りを取った。