第2章 初めての彼氏は…、
「い、いえ!杏寿郎さんの事を誤解していたんです!その…怒ってしまったのだと思ってて…それで私が勝手に怖く思っちゃって……。」
杏「よもや。」
杏寿郎は意外そうな声を出した後、納得してからパッと切り替えて明るい笑みを浮かべた。
杏「過去形という事は今は違うのだな!良かった!!」
「………はい…。」
天元の言った言葉が頭に響く。
(本当に切り替えが早い人なんだな…。サッパリしてるというか…。)
りんは杏寿郎の眩い笑顔を見つめると、ふわりと少しあどけない笑みを浮かべた。
「ふふ、煉獄さんって面白い人ですね。」
その笑みを見た杏寿郎が目を見開いて固まった。
杏寿郎があまりにも熱心に見るので、少し居心地悪くなったりんの花咲く笑みは困ったようなものへと変わってしまう。
「あ、あの…、」
その言葉で我に返った杏寿郎は初めて自身の頬が熱を持つ感覚を覚えた。
杏「いや!すまない!!そして煉獄さんではなく杏寿郎と呼んでくれ!!」
「あっ…そうでした…。」
そう言って口元を手で押さえて少し俯くりんを見つめる。
杏「……………………。」
ほんの少し、胸がきゅっと掴まれたような奇妙な感じがした。
杏(あれが彼女の本当の笑顔なのだな。)
そう認識すると、少しでも多く隣で笑ってもらいたいと思った。
こうして先行き不安に思えた二人の交際は、少しそれらしくなったのだった。