第9章 牽制
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杏(……誰だろうか。)
七階の廊下を歩いていた杏寿郎は、人影がりんの家に入っていくのを見て首を傾げた。
そして何となくドアの前まで駆けた時、りんが切羽詰まった声を出した。
それを聞いた杏寿郎の毛が逆立つ。
しかし、急いで鍵をねじ込みドアを開くもチェーンが掛かっていた。
杏(これは犯罪だぞ!!)
状況を正確に把握した杏寿郎はゴオォと音を立てて肺を膨らまし、グッと腕に力を込めた。
———バキンッ
チェーンが固い音を立てて壊れると杏寿郎は靴も脱がずにダッと部屋の中へ入る。
杏「りん!!!」
リビングに着くと杏寿郎は何かに覆い被さっている男を見つけた。