第9章 牽制
(手ぶらで何言ってるの…。)
りんはドアをゆっくり狭めた。
「そうなんですか。ありがたいです。今ちょうど大食漢の人がお家にいるので。」
りんがそう言って笑うと男の指がピクリと動く。
男「…あの時の彼氏さんですか?」
りんはもちろんその質問に笑顔で頷いた。
「そうなんです。十人前は食べるんですよ。驚いちゃいますよね。」
そう返しながらちらりと下を見る。
適当な挨拶をして一気にドアを閉めたいのに、男の足がそれを阻止しているのだ。
男「…………嘘ですよね。」
足に気を取られていたりんの心臓がドクンと大きく脈打つ。