第9章 牽制
杏(だがもし距離感を誤って押し過ぎていたのだとしたら…、)
杏「………………………………。」
そうして少し黙り込むと杏寿郎は突如口角をきゅっと上げて再び合い鍵を取りに行った。
普段から悩み過ぎないようにしている故に『恥と思わない事であるのなら取り敢えず行動してみよう!』とスパンと決めたのだ。
杏(りんさんは理由なく冷めたりはしない!常に藤川さんより彼女を想っていよう!そうすれば全て上手くいく!!)
そう思うと颯爽と家を出たのであった。
———
「あ…、こんばんは。」
りんは扉の向こうにいた "ご近所さん" に余所行きの笑顔を向けた。
りんが目の前で杏寿郎とイチャつく様を見せつけた事がある男だ。
男「こんばんは。その…、会社で貰った土産が食べ切れなかったから水瀬さんにもどうかなと…、」
その男とはそんなやり取りをする仲ではない。