第9章 牽制
(杏寿郎さん…!)
そう恨めしく思っても相手はその場にいない。
代わりに藤川が心配そうにりんの側に片膝をついた。
藤「体調が悪いのなら前もって言って欲しい。君の代わりはいないけれど、いないからこそ休んでもらいたい時もある。それに…、」
藤川は何か言いかけたところで固まった。
その視線の先にあったのは他の男を牽制する三つの赤い華であった。
先程までは見えていなかったのだが、りんが屈んだことによって見えてしまったのだ。
藤(まさか…、)
そして、腰を抜かしたままのりんの顔を見つめる。
その顔は不自然な程に赤い。
藤「…………………………。」
それを見れば、腰を抜かした理由が人には言えない事であるのだと察しがついた。
藤「……君、恋人がいるのか。」
「えっ!?」
りんは思わず目を見開いて赤い顔を上げた。
すると藤川はハッとし口を手で押さえる。