第9章 牽制
杏(……幸せ過ぎて怖いくらいだな。)
杏寿郎はそう思って口角を上げるとベッドから出たのだった。
杏「りんさん、おはよう。」
杏寿郎がそう声を掛けると、冷蔵庫の中から卵を取り出していたりんが振り返る。
そしてふわっと花咲くように微笑んだ。
「おはようございます。もうすぐ出来ますよ。」
杏「よもや!急いで顔を洗ってくる!!」
杏寿郎はそう目を丸くすると慌てて洗面所へと向かった。
りんはその様子にくすくすと笑い声を漏らし、手早く卵焼きを作ると皿によそう。
杏「相変わらず美味そうだな!朝からこんなに作るのは手間だったろう!!」
洗面所から帰ってきた杏寿郎は、盛りだくさんの朝食を見ると輝く笑顔を見せながら席に着いた。
それを見たりんの頬も自然と緩む。
「いえ…、朝早く起きるのは別に苦じゃないので…。」
それが嘘だと知っている杏寿郎は口元をむずむずとさせてから『そうか!』と返した。