第9章 牽制
———ピピピッ、ピピピッ
翌朝、自身のアラームの音を聞いたりんはすぐに覚醒した。
そして慌ててそれを止め、自身に腕を回している恋人の顔をそっと見上げる。
(よかった…起きてない……。)
りんはそうほっとするともぞもぞと動いて杏寿郎の腕の中から脱し、洗面所へ向かった。
約束通りご飯を作る為に早起きしたのだ。
(うう…眠い…。けど、)
見つめた鏡の中の自分は頬を緩ませていた。
(恋人に朝ごはん作るなんて幸せすぎる…!)
りんはそう思うと冷たい水で顔を洗ったのだった。
———
杏(……………………。)
緩く覚醒した杏寿郎は腕の中にりんがいないことに気が付くと目を見開いた。
そして、寝ぼけた頭で一瞬、『昨晩の事で呆れて帰ってしまったのでは』と思った。
しかし、すぐに台所から漂ってきた良い匂いが全てを教えてくれる。