第8章 ※夜の顔
杏「これも良いな。よりしっかりとくっついていられる。」
(そういうつもりで背中を向けたんじゃないんだけどな…。)
そんな事を思いつつ、杏寿郎の熱い体温を感じていると、シーツに関しての問題発言などどうでも良くなってしまった。
そして、杏寿郎の腕の中でくるりと半回転する。
杏「む。やはりこちらで眠るのか。」
見上げた先の杏寿郎は嬉しそうな顔をしていた。
「顔、見たかったので…。」
りんがそう正直に言うと、杏寿郎はにこりと微笑み、りんの額に優しく口付ける。
杏「愛らしいな。」
これまた真っ直ぐな言葉が返ってくるとりんは堪らず杏寿郎の胸に顔を埋めた。
杏「よもや…顔が見えなくなってしまった。」
「おやすみなさい。今日は…とっても嬉しくて楽しかったです。忘れません。」
りんはそう言ってから『夕方までの話です。』と小さな声で付け足した。
杏寿郎はその補足に笑い声を漏らし、りんの髪を梳くと電気のリモコンに手を伸ばす。
杏「俺も君を家族に紹介できて、初デートもできて、とても嬉しく、楽しく思った。そして夜の方もとても良かった。」
それを聞いたりんは杏寿郎の脇腹を少し抓った。
杏寿郎はそれに再び笑い、宥めるようにりんの頭を撫でる。
杏「すまない!ではもう寝よう!」
「…はい。おやすみなさい。」
杏「うむ。おやすみ。」
そうして二人の長かった週末は終わりを告げたのだった。