第8章 ※夜の顔
りんはそう頷くと少しぎこちない表情でベッドに入る。
するとパッと灯りが消え、隣に杏寿郎が入ってくる音が聞こえた。
杏「おいで。」
昨夜同様、杏寿郎はりんを抱きしめて寝るつもりらしく、腕を伸ばしてりんを誘った。
りんは杏寿郎の胸に両手を添えてくっつくと、杏寿郎の力強い鼓動を聞きながらとある覚悟をした。
「杏寿郎さん。」
杏「どうした。」
「…ちょっと、腕をゆるめてください。」
杏寿郎がその願いに少し首を傾げた気がしたが、りんは何も説明せずに緩んだ腕から抜け出し枕の方へずり上がった。
そして、杏寿郎の頬に両手を添える。
「………や、優しくして下さいね。」
そう震える声を出すと杏寿郎に口付けた。
りんは恥を捨てて杏寿郎の気持ちを汲み、夜のお誘いをしたのだ。
すると杏寿郎は返事をするよりも前に電気を点けた。