第8章 ※夜の顔
そこには用意していたゴムやローション、そして大人の玩具まである。
杏(………うむ…正直に言うとものすごく楽しみにしていた。)
それらを見て浮かれ具合いを自覚すると、そっと引き出しを閉める。
杏(だが、何より彼女の気持ちが大事だ。丁寧に愛したい。)
少し気持ちがぐらついだが、杏寿郎はそうして改めてりんを思いやる気持ちを持ち直したのだった。
「杏寿郎さん…。お風呂あがりました。」
その声に杏寿郎はギクッと体を揺らす。
そして口角だけをきゅっと上げて『うむ!!』と返事をしたのだった。
(…元気な声だったな。もう気にしてないのかな…。)
りんはそんな事を思いながら、寝室から出てきた杏寿郎の笑顔を見て少し首を傾げた。