第8章 ※夜の顔
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「…………はぁ…。」
りんは浴槽に浸かると思わずため息をこぼしてしまった。
(優しい煉獄家の皆さんにお会いして、水族館で初デートをして…素敵な一日だったのに…。)
そんな一日の終わりに愛する恋人の希望を叶えてやれない。
それだけで一日が台無しになってしまうように思えた。
(だけど…、)
りんは自身の体を見下ろして頬を熱くさせる。
(は、裸を見せるって…。皆よく見せられるな…想像しただけで死んじゃいそう…。)
そんな事を考えていると逆上せそうになってしまい、りんは慌てて湯から上がったのだった。
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杏(初めてなのだから大事にしてあげなくては…。只でさえ口付けは失敗しているんだ。次こそは…、)
そうは思いつつ、寝室にいた杏寿郎はサイドテーブルの引き出しを開けた。