第7章 一大イベント(part. 2)
「そんな…いきなり過ぎます…。」
そうぽつりと呟くと杏寿郎が立ち止まる。
杏「いきなり?」
りんはそれに気が付くと首を傾げながら振り返った。
杏「君は服を着たままするつもりだったのか。」
「……………え……?何を…、」
杏「セックスだ。」
りんは固まった。
「………せっ……………?」
杏「セックスだ。今日すると約束したろう。」
「し…してません……。」
杏「………………………………。」
杏寿郎はりんの消え入りそうな声を聞きながら二人のやり取りを思い返してみた。
すると、確かに約束はしていなかった。
ただ、りんが部屋に上がると聞いて勘違いしただけだったのだ。
今夜があると思って散々用意をし、我慢をし、待ちわびていた杏寿郎は愕然とした。
杏「………………そうか……。」
そんな杏寿郎の表情を見たりんは居たたまれない気持ちになってしまった。
(わ、私が頑張れれば…杏寿郎さんは…、)
そう思って『頑張ります!』と言おうとするも、やはり怯んでしまい声が出ない。
(だって…、知識はあるけど…興味がない訳でもないけど、心臓が止まってしまいそう……。)
りんはそんな気持ちを抱くと結局何も言えず、『それなら仕方ないな!!!』と吹っ切れたように言う杏寿郎に手を引かれて家へ向かったのだった。