第2章 初めての彼氏は…、
(……び、びっくりした…。真顔になると雰囲気が変わる…。)
杏「何か食べ物も頼もう!」
笑みを浮かべながらそう朗らかに言う男は、確かに教師という仕事が似合う爽やかな男だ。
だが、そんな彼の初めての恋人となったりんは、皆が見た事のない、想像もできないような新たな一面を見ることになるのではないか…と感じたのだった。
杏「全然飲んでいないな。何を考えているんだ。」
杏寿郎は口角を上げながらりんを見つめてグラスを指し示す。
杏寿郎の異常な切り替えの良さを知らないりんは、その微笑んでいるように見える顔を怖く思ってしまった。
「あ……その…、」
まさか恋人相手に『少しあなたを怖く思って警戒しています。』とは言えない。
「……さっき飲みすぎてしまって。」
りんがそう言って微笑み返すと、相変わらず口角を上げたままの杏寿郎がその顔をじっと見つめる。
杏「…なぜ今嘘をついた。二人きりの今、理由を伝えなかったということは俺自身に原因がある可能性が高いな。」
「…と、トイレ行ってきますっ」
りんはスマホをパシッと掴むと杏寿郎から逃れるように席を立った。
(天兄のばか!あの人ちょっと怖いよ!)
杏「……よもや。」
一方、全く悪気がなかった杏寿郎は目を丸くしてりんの後ろ姿を見送ったのだった。