第2章 初めての彼氏は…、
杏「りんさん。」
杏寿郎が名を呼ぶとりんはハッとして身を引いた。
「す、すみません!威力がすごくて…!」
杏「何の威力だかは分からないが、そう身を乗り出しては胸元が見えてしまうぞ。他の男にもしているのか。」
「…え………、」
りんは男に無防備な態度など取ったことがない。
むしろ逆だ。
寄ってくる軽薄な男に隙を見せれば面倒なことになるに決まっている。
それ故にりんは目を丸くして呆けてしまった。
杏(自覚が無いのか。)
杏寿郎はそう勘違いをすると笑みを消し、りんの手首を掴んで軽く引き寄せた。
杏「恋人だというのなら、このくらいは口出しする権利があるだろう。今後一切、他の男に無防備な姿は晒さないでくれ。気が気でない。」
「え…あの、ですが、」
杏「返事は。」
杏寿郎が目を細めて低い声を出すと、りんはビクリと身を震わせてこくこくと頷いた。
「し…、しません。絶対に…。」
その震える声を聞いた杏寿郎はパッと微笑みを浮かべると共に手首を解放した。
りんはその手首をきゅっと握りながら座り直し、少し杏寿郎から距離を取った。