第6章 一大イベント(part. 1)
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「その言葉から察するに父はウブヤシキさんに近付きたいと思っているようでした。私はまだ小学生だったので興味が持てずうろおぼえですが…。」
杏(……よもや…。)
杏寿郎のお陰で立ち直ったりんは、結局自身の口から両親について皆に吐露する事を決め、複雑な心境の杏寿郎の目の前で赤裸々に語っていた。
杏(俺にしか打ち明けられない事なのかと思ったのだが…、)
そう一瞬もやっとしたが、自身の家族と懸命に交流を図ろうとしてくれる姿勢はやはり嬉しかった。
槇「産屋敷家といえば隠れた大資産家だからな…。だからといって宇髄家の長男と上手くいきそうにないと分かったら放任になるとは…、」
瑠「こんなに可愛らしいのに。」
千「宇髄家当主の義理の親だからといって、お館様が特別な扱いをする訳でもないと思いますが…。」
杏「そうだな。恐らく親戚として挨拶したとしても平等に接して下さるだろう。つまりだ!」
杏寿郎はそう言うとりんににこりと微笑む。
「…つまり……?」
杏「うむ!『俺と結婚したとしても "ウブヤシキさん" の寵愛は受けられません!』と先に言ってしまえば良い!その後、何のフィルターもない俺を見てもらおう!これで何も問題はないな!!」
りんはそうスパンッと言い切って太陽のように笑う杏寿郎を見つめて再び涙を溢した。
それを見た杏寿郎は眉尻を下げて笑いながらりんを抱き寄せる。
杏「君は泣き虫だな!」
「めったに泣きません…。」
杏「そうか!!」
そうして問題を共有した煉獄家一同とりんは予想より絆を深めたのだった。