第2章 初めての彼氏は…、
「………………………………。」
一方、そのような事を初めて言われたりんは羞恥よりも安堵を覚えていた。
「……今までそんな事…誰にも言われませんでした…。」
杏「む、そうなのか。なかなかに分かりやすかったと思うが。」
そう驚く杏寿郎の手はまだためらいのない動きでりんの頭を撫でている。
(……この人は…… "できなかった" じゃなくて、ただ "作ってこなかった" タイプの人だ…。)
りんはそう気が付いた時、力関係が変わってしまった気がした。
「わ、分かりやすいですか…?ですが、皆ずっと…一度も彼氏がいたことなかったのに、少しも疑いませんでした。」
杏「よもや!それでは俺と同じだったのだな!」
杏寿郎は意外そうな声を上げると少し嬉しそうに口角を上げた。
(う……愉快そう…。)
「中一の時に天にぃ…天元くんとの間に変な噂が立っちゃって…。」
杏「ああ、中学三年の時の噂の相手は君だったのか。その話題になると彼はピリピリしていたな。」
「……そうだったんですか…。」
(天兄は私が何度怒っても『気にすんな。』としか言わなかったから、何とも思ってないんだと思ってた…。)