第5章 華
杏(怒ってはいないのだな。許してくれたりんさんの優しさに報いるよう努めよう。)
そう思いながらベッドに入り、掛け布団を上げてりんを招く。
そして素直に入ってきてくれたりんの頭を撫でた。
杏「では、消しても良いか。」
「はい。」
パッと灯りが消えるとりんの体が少し強張る。
杏「大丈夫だ、もう何もしない。おいで。」
布が擦れる音を聞いたりんは、杏寿郎が自身を招くように腕を伸ばしてくれているのだろうと察した。
「……失礼します。」
そう言いながらおずおずと近寄ると杏寿郎はりんをしっかりと抱き寄せる。
杏「温かいな。」
「はい…。」
りんはドキドキしてしまって全く眠くならなかった。
しかし——、頭上からは十分と経たないうちに深い寝息が聞こえてきた。