第5章 華
(え……えっ!?)
それは確かに杏寿郎の寝息だった。
(寝付き良いんだ…そんな感じはするけど…。そんなところも可愛い……。)
りんは暗くて寝顔が見えない事を残念に思った。
「………………………………。」
そして、杏寿郎の腕に収まって静かな寝息を聞きながら今日の出来事を思い返してみた。
(部長にブレスレットをもらって…、ただ飲むだけのはずだったのにお家へ来て、キスをして、ご飯を作って食べて、お泊りをして…、)
そうして先程の杏寿郎を思い出すと、頬を染めながら熱を持ちそうになる体を持て余した。
(杏寿郎さん、よく途中で止められたな…。胸は触られたけど。)
そんな事を思いながら顔を上げる。
暗がりでは顔など見れないだろうが、それでももぞもぞと上の方へ移動しようとした。
すると杏寿郎がガシッとりんを強く抱きしめ直す。
「!!」
りんは最初、杏寿郎を起こしてしまったのだと思った。
しかし、杏寿郎は依然として深い寝息を続けたままであった。