第5章 華
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杏(……遅いな。嫌われてしまっただろうか。)
杏寿郎は灯りを点けた寝室で、一人ベッドに横たわりながらそんな事を考えていた。
杏(ソファで寝てしまったのだろうか。それなら彼女にベッドを譲りたい。)
そう思うと身を起こしてベッドを出た。
「あっ」
ドアを開くとりんがすぐそこに立っていた。
杏「すまない、入るところだったのか。」
「あ、……はい。」
本当は気まずく思って入れずに立ち尽くしていたのだが、りんは肯定して杏寿郎が招くまま寝室に入った。
「あの……、これからに備えて夜用の下着をこちらに置かせてもらってもいいでしょうか…?」
杏寿郎はその提案にほっとしたような笑顔を見せた。
杏「ああ。そうしてくれると俺も助かる。収納には余裕があるので着替え用の服も持って来ると良い。」
そう言われたりんははにかんで微笑みながら『分かりました。』と返事をした。