第5章 華
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杏寿郎の家へ帰ってきた二人は湯を溜めながらテレビを見ていた。
杏「む、沸いたようだな。先に入ってきてくれ!」
そう言われたりんは目を丸くした。
「そんな…杏寿郎さんが先です。」
杏「料理もして疲れたろう。君が先だ!」
「だめです!」
きっぱり断るりんを見て、杏寿郎も目を丸くした。
杏「君は客なのだから遠慮せず先に入るべきだ!」
「そ、そんなことできません…!家主が先に入るべきです!」
二人は自身が浸かった湯を使わせる事に抵抗を感じていたのだ。
杏(りんさんが浸かった湯に俺が入って良いのかという疑問もあるが、心頭滅却して入ればなんとかなるだろう!)
(私が浸かったお湯なんかを杏寿郎さんに使わせるなんて無理…!絶対譲れない…!!)
そうして珍しくりんが折れない姿勢を見せると、杏寿郎はりんをひょいと担ぎ上げた。