第5章 華
杏「ドンピシャだったぞ。良い奥さんになるだろう。」
そう言われるとりんは俯いて『そうでしょうか。』と呟く。
杏寿郎は髪に隠れたりんの表情を見る事ができなかったが、赤い耳を見付けると幸せそうに微笑んだのだった。
———
「………あの、今晩は本当にこちらに泊まるのでしょうか…?」
杏「約束したろう。」
(約束は…してない……。)
そう思いつつ、強く出られると弱いりんはこくりと頷いた。
「では…お化粧落としとかパジャマとか持ってきます。」
杏「化粧落としなら買いに行こう。泊まる度取りに帰っていたら手間だろう。服は俺のを着ると良い。」
「え、」
りんが戸惑っている間に杏寿郎は立ち上がって鍵をポケットに入れてしまう。
杏「行くぞ。」
りんは手を握られると、引かれるまま玄関へ向かった。
(我ながら押しに弱い…。)
りんは廊下を歩きながらそんな事を思ったのだった。