第5章 華
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杏「ご馳走様でした!!!」
「お粗末さまです。」
杏「本当に美味かった!!君はすごいな!!また食べさせてくれ!!!」
そう全力で褒めてくれる杏寿郎はりんの自己肯定感を優しく上げてくれた。
「本当はこういう家庭料理が好きなんですけど、最近おしゃれ料理しか作ってなくて…私も楽しかったです。」
杏「…そうだったのか。」
杏寿郎は余所行きのりんの顔を思い出すと、少し思案するように視線を上へやった。
杏(料理を作る際にもイメージに合わせているとは大変だな。よくホームパーティーをするのだろうか。)
杏「そういえば今週は随分と俺に時間を割いてくれていたが、それは問題なかったのか。」
「それは…、新しい彼氏ができたと思われてるんじゃないかなと…。『付き合いが悪い』とかは特に言われてないです。」
それを聞いた杏寿郎は『そうか。』と言いながら少しだけもやもやとした。
杏(別の誰かと噂が立ってしまうのではないか。)
『別の誰か』と思いながら、杏寿郎の脳内には『藤川』という名がハッキリと浮かんでいた。