第1章 出会い
そう言ってからりんはカッと頬を熱くさせた。
もちろんそこまで言うつもりはなかった。
「あの、ち、ちがくて彼氏が今だけじゃなくてずっと」
杏「うむ!宜しく頼む!!」
予想外の返事にりんは固まってしまった。
杏寿郎はそんなりんを再び面白いものを見るような目で観察した。
杏「大切な友人が勧めるのだから素敵な女性なのだろう。それにそろそろ考えねばならない年齢だ、断る理由はあるまい。何よりも、」
言葉を切ると眉尻を下げて少しあどけない表情を浮かべる。
杏「会話を聞かせてもらった!君は経験豊富なのだろう!ぜひ教え導いて頂きたい!!」
「…………………………。」
りんは働かない頭で初めての恋人に喜ぶべきか、杏寿郎の期待を不安に思うべきか、白状すべきか考えた。
杏「水瀬さん?どうした。」
その声にりんはビクッと体を揺らす。
そして、笑みを作った。
「みょ、名字で呼ぶなんてよそよそしいですよー。下の名前で呼んでください。」
りんはやはり打ち明けることができなかったのだった。