第5章 華
(お米は私の家で炊かないと…。それとも一個しかないけど土鍋をこっちに置いちゃおうか…。)
りんは少し悩んだが、往復する数が少ない方を選んだ。
「杏寿郎さん、土鍋を持ってくるので少し出てきますね。」
ソファの背もたれに両腕を乗せ、りんを凝視していた杏寿郎はそれを聞くとパッと立ち上がった。
杏「それなら俺が行ってこよう!どこに仕舞ってあるのか教えてくれ!」
「ほんとですか?」
りんは近寄ってきた杏寿郎を見ると、シンク下の収納棚を指差して微笑んだ。
「シンクのちょうど下、ここにあります。ピンクと黄色の花の絵が描いてあるものです。」
杏「愛いな!了解した!!」
それからりんは廊下へ行くと、再び鍵を取り出して杏寿郎に渡した。
(…恋人っぽい。)
杏寿郎もそう思っているのかとても嬉しそうににこにこしていた。
「では、頼みます。」
杏「うむ!!行ってくる!!」
りんは『行ってらっしゃい。』と言いそうになって口をつぐみ、ただ小さく手を振った。
(……早く少しでも進めよう。)
何となく気恥ずかしくなったりんはパタパタとキッチンまで駆けた。