第5章 華
「……よかった…。合わせてくださってありがとうございました。」
りんがそう言って微笑むと、杏寿郎は目を細めてりんの耳元に口を寄せる。
杏「一瞬期待した。罰として本当に泊まってもらおう。」
「……え………、」
りんは不意打ちに耳まで赤くなると、杏寿郎に手を引かれて俯きながら歩いた。
——
杏「以上で良いだろうか!」
「…はい。これで十分作れると思います…!」
(いくらになるだろう…。)
りんはそう思いながら、二つのカゴに詰め込まれたてんこ盛りの食材を見つめた。
そうしてレジの店員を悪戦苦闘させた後、杏寿郎は口角を上げながら財布を取り出して店員の前で立ち止まった。
「あ…、杏寿郎さん、こっちに運んで下さい。お支払いはこっちなんです。」
杏「よもや。数年前に来た時はこんなシステムではなかったはずだが。」
りんは目を丸くする杏寿郎を微笑ましそうに見つめた。