第5章 華
———
それから二人は杏寿郎のキッチンに運んできた物を仕舞い、仲良く手を繋いで買い物へ出かけた。
「あ…こんばんは。」
りんの余所行きの笑顔を見た杏寿郎は、首を傾げながらりんの視線の先を見た。
そこにいた若い男は杏寿郎を見つめながら『こんばんは。』と小さく挨拶を返した。
杏「どなただろうか。」
「同じ階に住んでる、いわゆるご近所さんです。」
日頃からその男の下心を感じていたりんは『これはチャンスだ。』と思うと、杏寿郎の腕に自身の腕を絡ませて身を寄せた。
「そうだ…、お夕飯を作って食べたら今夜はそのまま杏寿郎さんのお部屋に泊まってもいいですか…?」
杏寿郎は一瞬固まってからりんが何をしたいのかを理解した。
杏「…ああ!勿論良いぞ!断りを入れず泊まって良いといつも言っているだろう!!」
そんな様子を見せつけられた男は不快そうな顔をしながら去って行った。