第5章 華
杏「さすが隣なだけあってすぐ着くな。」
「ほんとですね。」
りんはそう言いながら鍵を開けると杏寿郎を家へ招き入れた。
「…いらっしゃいませ。」
杏寿郎は女性らしい花の香りのルームフレグランスにドキッとして早々に固まってしまった。
りんは立ち止まって玄関に上がらない杏寿郎の手を引く。
「杏寿郎さん、早く運んで早く作ってお夕飯食べましょう。」
杏「…ああ、すまない!」
そうしてやっと家に入ったと思ったら、今度は女性らしい部屋の内装を見て固まった。
(……可愛い反応だからほうっておこう。)
りんは大きな目で部屋を観察する杏寿郎を置いて、ダブっている鍋やフライパン、複数ある菜箸やフライ返しなどを調理台に並べていった。
「…………………。」
りんは並べた古い鍋とフライパンを見つめると、杏寿郎が見ていないのを確かめてからそれを下げて新しい物と交換した。
(どのくらいあちらでお料理するか分からないけど…、こうしたい。)