第5章 華
「少し家へ行ってきます。」
杏「どうしてだ。」
廊下へ急ぐりんに付いて行きながら杏寿郎は眉尻を下げた。
りんは廊下にあった鞄から鍵を取り出すと、その表情に気が付いて安心させるように優しく微笑んだ。
「私の家、いま調理道具がたくさんあるんです。買い換えようとして購入したのでダブっている物を持ってきます。」
その言葉に杏寿郎はパッと顔色を明るくさせる。
杏「それなら俺にも手伝わせてくれ!軽いものではないだろう!」
「わ、ほんとですか?ありがとうございます。」
二人は少しわくわくとした空気を纏いながら杏寿郎の部屋を出た。
(そういえば男の人を家に招くのって初めてだな…。)
杏「女性の家へ行くのは初めてだ!」
何となく緊張している時に似たような事を言われると緊張が解けてしまった。
「ふふ。私も初めてがいっぱいです。」
そうして仲良く会話を続けていると、あっと言う間にりんの部屋前に着いてしまった。